季節は巡り、冬が終わって春になった。この世界に来て二度目の春だ。

「ったくよォ、久しぶりに入った依頼がペットの世話ってどうなの?」
「文句言わないでください、依頼が入っただけでありがたいって思わないと」
「ペットとか言いつつ絶対エイリアンでしたーとかいうオチネ、そうだったらワタシ帰るアル」
「どこのワガママな女優だよ!仕事だからね、仕事!」
「そもそもさァ…俺ら働いたら負けじゃね?」
「ニートか!!」

今日久しぶりに万事屋に入った依頼。それは一日ペットの面倒を見ていてほしいというものだった。ペットシッター、というものなのかな。万事屋の三人は相変わらず愚痴は多いものの、仕事場まで歩いて向かっている。わたしはお弁当を抱えて、そんな三人を後ろから見ていた。

離れてた期間は短いようで長かったけれど、周りでは家出をしていたということになっているらしい。わたしが戻ってきても何も変わっていなかった。みんなわたしを家族として迎え入れてくれた。家族。おそらく、わたしが一番欲しかったもの。前を歩いていた銀さんがくるりと振り返る。


「なあに、銀さん」
「いや、お前となり歩け」

いいから。小声でそういう銀さんの隣にわたしは並んだ。

はどう思ってるアルか?」
「え、ペットの話?」
「やっぱりエイリアンに決まってるアルな!」
「神楽お前しつけーぞ」
「そうだよ、心配しすぎだって」
「神楽ちゃんの大好きな犬や猫かもしれないよ」
「キャッホー!それなら天国ネ!」



「…」

依頼人のご自宅は豪邸で、庭には大きな檻が置いてあった。その中にはゴリラに似た生物が入っている。似た、というのは、ゴリラにしては大きすぎるという意味であり、しかも最悪なことにどうやらわたしたちの姿を見たせいか、興奮して暴れているようだ。銀さんが突っ込む。

「ゴリラかよ!」
「姉御呼んでくるアルか?ゴリラの駆除なら姉御はプロね」
「神楽ちゃん僕らがやるのは駆除じゃなくて世話だからね!?」
「あ、あれっ、なんか檻が…」

みしみし、めきめきっと金属が軋むような音が聞こえたかと思えば、太い金属ネジが外れ大きな音を立てて檻が吹っ飛んだ。

「あれ、これ…ヤバくね?」

そう言った銀さんの額からは汗が吹き出している。

「うおおおぉおおお!!」

雄叫びを上げながら走る銀さんに必死でついて行く。後ろからはゴリラがすごい勢いで追いかけてきていた。

「ホラ見ろ!ワタシの言った通りエイリアンだったアル!」
「っていうかなんで僕らこんな貧乏くじばっか引き当てるんですかねェ!」
「オイ!誰かバナナ持ってねェのか!」
「あっ、お弁当の中に、入ってます!」
「おーい、何してるんでェ」

サイレンの音が聞こえて、走る私たちの横に真選組のパトカーが並んだ。中には土方さんと総悟くん、後ろに近藤さんが乗っている。

「旦那困りやすぜ、ペットの躾くらいちゃんとしてもらわねーと」
「あれがペットに見えるか!お前んとこの上司だからアレ」
「いや…俺後ろに乗ってるけど」
「あ、マジでィ近藤さんだ」
「だから俺乗ってるってェ!!」
「近藤さんにも困ったもんだぜ、最近会うたびゴリラにそっくりになっていきやがる」
「トシまでェェェ!?」
「オイ

総悟くんは走るわたしを見てニヤリと笑った。

「今度家出したときは、俺の嫁にしてやりますぜ」
「よっ…!?」
「こんな非常事態になに人の女口説いてんだクソガキィ!」
「んじゃ、頑張ってくだせェ」

窓が閉まり、パトカーはスピードを出してあっという間に走り去ってしまった。わたしたちの後ろではゴリラが家を破壊している。まるでキングコングだ。

大変な状況なのに、何だか笑いがこみ上げてきた。元いた世界での何もない暮らしが一転して、こんな奇想天外な暮らしを送っている。好きな人たちに囲まれて。あっという間に、わたしの両手は大切なものでいっぱいになっていた。今なら自信を持って言える。

「銀さん!」
「何だァ!」
「わたし、幸せです!」
「えっ今!?今それ言っちゃう!?」

満面の笑みで全力疾走しているわたしは、周りから見たらおかしい人だろう。銀さんのおかげで、わたしは幸せなんです。

「じゃーもっと幸せにしてやるわ!!」



wonder wonder



どんな毎日でも、あなたとなら大丈夫。


(20160417)