ソファに寝転がってジャンプを読む。今日も依頼はナシ。いつも通りの日常。が、目の前に広がる漫画の内容は全く頭に入ってこず頭に浮かぶのは昨日のの表情ばかりだ。

「ごめんなさい、坂田さん」

何で謝るんだよ。一体何のごめんなさいなんだアレは…ったく。新八のお茶を啜る音が部屋に響く。

「…銀さん、ジャンプ逆さまですよ」
「…これはアレだ、今こうやって読むのが流行ってんだよ、頭の体操的な感じで」
「頭より血糖値の方を心配した方が良いんじゃないんですか」
「うるせーな」
「…あの、銀さん、さんと何かあったんですか?」

昨日の食事のときから、なんだか二人の様子がおかしかったような気がしたので。新八が湯呑みを見つめたまま不安そうに呟く。何かあったかと聞かれれば何もない。何もないのにアイツが謝ったからおかしなことになってんだ。俺は起き上がり、ジャンプをテーブルの上に置いた。

「神楽ちゃんも勘付いてましたよ」
「…んで?神楽はんとこ行ってるってわけか、ご苦労なこった」
「余計なお世話だとは思ったんですけど…二人が変だと僕らも不安になるんです」
「なァ新八、」

お前はアイツに、元の世界に帰ってもらいたいと思うか?そう問おうとしたとき、大人しく座っていた定春がのっしのっしと俺の方にやってきた。口に何か咥えている。俺はそれを手に取って、見てすぐさまビリビリと破り捨てた。いつだったか、あのストーカー女が俺に「さっちゃんのブロマイドだぞ!大切にしてね銀さん!」とか言って何十枚と持って来た写真だ。速攻で全て破り捨てたはずだったが残っていたらしい。はあ、と深いため息をついて、俺は定春のデカい鼻をつついた。

「定春お前、こんなしょーもないもん持って来るぐれーなら飼い主連れ戻して来い」
「銀ちゃん!大変アル!」
「噂をすれば何とやらだ、神楽お前よォ」
のお店が爆発してたネ!」

…は?

「ばっ爆発!?それで神楽ちゃん、さんは!?」
「ワタシが行ったときにはお店は真選組の奴らで一杯だったアル…はいなかったネ…」
「も、もしかしてさん…爆発のときに…えっ銀さん!?」

気が付いたら考えるよりも身体が先に動いていた。俺は、大事なモンはこの手で守るって決めたじゃねーか。なのに、なんでこんなことになんだよ。なんでごちゃごちゃ考えてたんだよ俺は。遅れてきた思春期かコノヤロー!舌打ちをひとつ鳴らして階段を駆け下りると、万事屋から定春が飛び降りてきて俺に向かって吠える。乗れ、ということらしい。

「…んだよ、コレ…」

のバイト先の団子屋は酷い有り様だった。オイオイ、せっかく俺らが屋根修理したのに意味ねーじゃん。というか笑えねーってコレ。の姿を探すが、神楽の言うとおり見当たらない。…まさかあの桂小太郎がこんな所に来てたなんてねえ。ぼそり、そんな声がすぐ隣から聞こえ、俺は反射的にその声の持ち主であるオッサンの髪をぐっと掴み引っ張り上げていた。

「ちょっ!イタタタタ!アンタ何すんのォ!?」
「オッサン、詳しい話知ってんの?ちょっと教えてくれない?桂なんとかが何だって?」
「イタタタタ!まじで抜ける!残された希望が全部抜ける!」
「大丈夫だって、毛根が死なない限り何度でも髪は生まれ変わるんだよ…多分」

簡単な話だった。ヅラがこの店に来ていたところをあのチンピラ警察どもが襲撃したらしい。は歩けないほどの怪我を負ったようで、パトカーに乗せられて行った、とのこと。オッサンの髪を離し、定春、と名前を呼ぶと定春は分かったように走り出した。コイツは意外と頭が良い。後ろからギャーギャー聞こえてきたがそんなのを相手にしている暇はねェ。歩けないほどの怪我って、何だよ。俺の知らないところで勝手に厄介ごとに巻き込まれてんじゃねーよあのバカ。何でもかんでも結局全部一人で抱え込みやがって。今優先すべきはとにかく、だ。

真選組屯所の門をそのまま突っ切る。モブが引きとめようとしていたがそんなの知ったこっちゃねェ。そのまま襖をブチ破った。

「お邪魔しまァァァす!!」
「ギャアアアアア!!」
「坂田、さん…」

と目が合ってひとつ確信した。俺は、のことを特別に好きらしい。



噛み砕いて吐き出したい



(20140622)