「お久しぶりです、戻ることにしました」

 想い人の高専卒業と同時に儚く散った初恋は、本人のなんとも淡白な挨拶でいとも簡単に復活した。


うつろわぬ温もり



「五条さん!」

 昼過ぎに仕事を終えて帰校後のこと。同じ補助監督の伊地知くんから長期出張に出ていた五条さんが戻ってきたとの情報を得て、私は彼がいつも勝手に仮眠室にしている空き部屋に駆け込んだ。
 いつもベッド代わりにしている茶色のソファに座っていた五条さんは、テーブルの上に置いてある白い箱を開けて中を覗き込んでいる最中だった。ノックもせず慌てた様子で飛び込んできた私を見て、「お?」と口を縦に開ける。

じゃん、運がいいね」
「う、運? そんなことより教えていただきたいことが」
「シュークリーム食べる?」

 慌てている私に釣られることなく、のんびりとした口調でそう言った五条さんは白い箱を持ち上げて向きを変える。箱の中にはぽってりとしたシュークリームが四つ並んでいて、五条さんはそれを一つ手に取ると大きな口でかぶりついた。

「伊地知に買ってきてもらってたんだよ。これ、皮に黒ごまと白ごまが練り込まれてて超うまいんだよね」
「七海さんが術師に戻られた件、五条さんが相談受けてたって聞いたんですけど本当ですか?」

 シュークリームは大好物だ。でも今はこっちの話の方が重要である。私の急な質問に、五条さんはもぐもぐと咀嚼しながら「うん、そうだよ」と頷いた。
 どうして。私は二つの意味でそう思った。どうして相談相手がよりにもよって五条さんだったのか。どうしてわざわざ、呪術師のような危険な職業に返り咲いたのか。だって七海さんは、あんなにも呪術師にはならないと言っていたのに――。
 ちらり、と頭を過ったのは学生時代の記憶。眉間に深い皺を寄せ、まっすぐ前を見つめたまま私に言葉をかける七海さんの姿だ。

「でもまあ、よかったんじゃない?」
「え?」

 そう言われてふと顔を上げれば、五条さんは既にシュークリーム一つを平らげていて二つ目に手を伸ばしていた。
 甘党だとは聞いていたけど、まさか全部食べるつもりなのかな。そう思ってすぐ、五条さんは黒いアイマスクの下から私に視線を向けてにたりと笑う。

さ、昔、七海のことタイプだったじゃん」
「なっ」

 五条さんの言葉に顔が一瞬で熱くなる。咄嗟に一歩後退りした私は、にやにやと意味ありげに含み笑いする五条さんに向かって声を張り上げた。

「別に、そんなんじゃ! 七海さんのことタイプだとか思ったことないですから!」
「……お取り込み中、失礼」

 一瞬で熱くなった顔から、またまた一瞬で血の気が引いていく。部屋のドアの前に立つ私。今、そんな私の背後に誰が立っているのか振り向かなくとも分かった。
 五条さんは私が部屋に来たときと同じように、シュークリームの入った箱を持ち上げて私の後ろにいる人物へ明るい声をかける。

「お疲れ〜。七海もシュークリーム食べる?」
「結構です、任務前に甘いものを食べると胃がもたれるので……さん」
「は、はい!?」

 声が裏返った。恐る恐る振り返ると、そこには学生時代にはかけていなかった眼鏡の奥から細く鋭い目を向ける七海さんがいて、なんだか心臓を強くぎゅっと握りつぶされたような気がした。
 もしかして、いや、もしかしなくても聞こえていたはず……。七海さん、と彼の名前を呼ぶ私の小さな声と、七海さんの「夕方からの任務ですが」という言葉が重なる。

「出発は十六時で問題ないですか」
「あっ、はい、おそらく七海さんならすぐ終わるかと……」
「そっか、七海は今日から一人で任務だっけ」

 死なないようにね。へらへらと笑いながら縁起でもないことを言う五条さんに向かって、七海さんの舌打ちが飛び私は冷や汗を流した。
 七海さんの等級は現時点で二級。本来ならば単独で任務に当たるのだが、ブランクがあったため復帰して今日までは他の術師に同行する形で任務に赴いていた。でも七海さんの実力なら、一年以内には一級へ上がるだろう。
 五条さんの言葉に七海さんは舌打ち以外の返事をしなかった。私にだけ聞こえるように「では、よろしくお願いします」と言ったあと踵を返し去っていく。そんな彼の背中に弁明することもできず、七海さんの姿が見えなくなったところで私はその場にへなへなと座り込んだ。

「あぁあああ……」
「七海さんのことタイプだとか、思ったことナイデスカラー!」
「やめてくださいほんと」

 私の声真似をする五条さんに向かって項垂れたまま抗議すれば、五条さんは軽く笑って「素直じゃない方が悪い」と言った。ごもっともだ。でも最初から素直になれていれば、七海さんが術師に戻った理由を本人ではなく五条さんに聞きに来ることも、それどころか初恋をこんな風にこじらせることもなかったのだ。
 五条さんでは話にならない。そう思った私は、その足で家入さんのところへ向かった。七海さんに失礼なことを言ってしまった、と起きたことをかいつまんで説明すれば、家入さんは静かに「へえ」と呟いたあと私にスマホの画面を差し出した。

「……これは?」
「歌姫先輩から送られてきたゴマフアザラシの赤ん坊の動画。かわいくない?」

 白い毛に覆われた小さな生き物がよたよたと前へ進む動画を見ながら、ああ、そういえばそうだった、と私は思った。昔から先輩たちはこうだった。悪い人たちではないが、どこかずれているのだ。そんな中で、唯一七海さんだけがまともだったから。だから私は七海さんのことを好きになったんだ。
 
◇◇◇

 私は伊地知くんと同学年だが、呪術高専には編入学だったので入ったときに先輩と呼べる人は三人しかいなかった。五条さん、家入さん、そして七海さんだ。それぞれが異質で、学生、しかも自分と同世代とは思えないほど特別な人ばかりだった。非術師家系の生まれとは言え、私の実力はそんなに劣るわけではない。私は自分のことをそう評価していたが、そんな私を打ちのめすには彼らの存在と実力は十分すぎるほどだった。
 長い木製のベンチに座り窓の外を眺める。十二月、造りが古い高専内の空気は冷え込んでいて息を吸うたびに肺がひりひりと痛んだ。大きな綿雪が降り注ぐ景色はなんとも感慨深いが、もうすぐ年末、そして新年を迎えると言うのに私の気持ちは晴れなかった。

「お疲れ様です」

 急に声が聞こえて自分でも驚くほど全身が跳ねた。慌てて振り向けば、自販機の前に七海さんが立っていた。

「あ、お、お疲れ様です……」

 鉈が入ったバッグを肩に担いでいる七海さんは外から帰ってきたばかりなのか、首には黒いマフラーをぐるぐる巻いていて耳輪の辺りがうっすらと赤く染まっている。
 七海さんと任務以外で二人きりになるのって初めてかも――。そのことに気付いて少しだけ緊張が走る。怖いわけではない。でも七海さんはなんというか、クールで五条さんや家入さんよりも少しだけ話しかけにくいオーラを感じる。
 マフラーに口元を埋めてまっすぐ自販機を見つめていた七海さんは、小銭を投入してボタンを押した。ガコン、という鈍い音がして缶飲料が吐き出されたあと、七海さんはそれを取ることなく再び小銭を入れる。

「何か飲みますか」

 一瞬七海さん以外に誰かいるのかと思ったが、どうやら私に話しかけているようだ。そう気付いた私は「えっ!」と声を上げてぶんぶんと両手を振った。

「そんな、申し訳ないので」
「もう小銭入れてしまったので」
「あ、う……じゃあ、ココアで……」

 あっさり負けた私が戸惑いつつそう言うと、七海さんは自販機に視線を戻しボタンを押した。二本目の缶が吐き出される。

「どうぞ」
「ありがとうございます、なんかすみません……」

 立ち上がって七海さんから缶のココアを受け取る。七海さんが買ったのはイメージ通りのブラックコーヒーだった。
 私の横を通り過ぎた七海さんは、意外にも先程まで私が座っていたベンチに腰を下ろしコーヒーの蓋を開けた。まさかこの場に留まるとは思ってもみなかった私は、少しだけ迷って七海さんの隣に一人分のスペースを開けて座った。
 あたたかい。心地よい温度のココアを握りしめたまま小さくため息を零せば、「さんは」と声をかけられたので隣の七海さんへ顔を向ける。

「今年はまだ任務入ってるんですか」
「ええと、三十日に一件だけ……今のところ、それで今年は終わりです」
「その怪我は?」

 七海さんの目がガーゼと包帯で覆われた私の手の甲に向けられる。恥ずかしくなって、私は「あー」と笑いながらジャージの袖を伸ばして負傷している箇所を隠した。

「今日、夜蛾先生との訓練でちょっと掠っちゃって」
「日曜日なのに訓練ですか」
「私から先生に頼んだんです」

 私、全然まだまだなんで。そう言って明るく笑ってみたものの、七海さんは笑わない。だんだんうまく笑えているのか分からなくなり、そもそも笑うところじゃなかったかもと思い始めた私は、黙って再び七海さんに買ってもらったココアへと視線を落とした。

さんは、高専を出たあとも呪術師として生きていくつもりですか」

 七海さんのその質問に、ひく、と目元が動いた。雑談の中の何気ない質問が、今の私にはまるで『お前は呪術師には向いていない』と言われているように思えて、無意識に缶を持つ手に力が入る。
 先輩たちみたいな、実力のある人には分からないだろうな。私の苦悩なんて。
 普段あまり考えないようにしていた『惨め』という単語が頭に浮かんで、なかなか消えてくれない。私はできるだけ平静を装い無理矢理口角を上げた。

「なる、つもりですけど、どうしてですか?」

 思っていたよりも低く震えた声が出て、余計に自分が情けなくなる。二人だけの静かな空間。窓の外から、木に積もった雪が地面に落ちる音が聞こえた。

「なんとなく気になっただけです。私は卒業後、呪術師にはならないので」
「……えっ」

 驚いて七海さんを見ると、ちょうどコーヒーを飲み干しているところだった。気付かない間にマフラーを外していたらしく、上下に動く喉仏をまじまじと見つめる。
 どうして、だって七海さんは――。

「そんなに、強いのに……」

 七海さんの目が私を捉える。心の中で呟いただけのつもりだったが、声に出してしまっていることに気付き私はハッとした。七海さんは話を続ける。

「呪術師として生きていくには能力面やフィジカル面以上に大事なものがあると思っています。何だか分かりますか」
「精神的な強さ、ですかね」
「それももちろん大事ですが、私はここだと思います」

 七海さんは既に空となったコーヒーを持っていない方の手で自分のこめかみをとんとん、と叩いた。
 頭の良さ? それとも、頭の回転の速さ? いまいち理解しきれず答えられない私からふい、と七海さんは視線を逸らす。そしてそのまま立ち上がると、自販機の横に置いてあるごみ箱へ缶を放り込んだ。

「どれだけ頭がイカれているか、です」
「い、イカれているかですか」
さんは……推測ですが、今呪術師でいることが苦しいのではないですか」

 そう言われて、まずすぐにそんなことはないと言い返せない自分に驚いた。そしてそれと同時に、普段無表情の七海さんもこんなに苦しそうな顔をするんだ、と不思議な気持ちを抱いている自分がいた。
 私は先輩たちに比べたらまだまだ実力不足で、努力も全然足りていない。そんな私が心の内でずっと燻らせている思いを、七海さんみたいな恵まれた人が理解できるわけがない。そう思っていた。けれど、本当にそうなのだろうか――。
 七海さんはバッグを肩にかけ直し、折り畳んだマフラーを腕にかけると少し気まずそうに「喋りすぎました」と眉根を寄せた。

さんは、自分にできることをできる範囲でやればいい。もう無理だと思ったら呪術師なんか辞めればいい。私はさんに死なれるのは嫌です」
「そんな簡単に、踏ん切りつきますかね……」
「嫌でもつけなければいけないときが来ます」

 七海さんは私を横目で見ると、もう一度「私は呪術師にはなりません」と決心したように言って、長い廊下の奥へと消えていった。
 校内で二人きりになるのも初めてだが、こんな話を七海さんとするのも初めてだった。彼のクールな印象は変わらない。でも七海さんから今しがたかけられた言葉の数々は、私のことを心配した結果によるものだと思うことができた。
 普通は先輩という立場なら、後輩が落ち込んでいたら頑張れ、大丈夫、とか、そういう無理矢理にでも前を向かせる言葉を吐くんじゃないのか。なんとなくそう感じたが、いざそんな言葉をかけられたら余計に凹んだかもしれないな、と思い私は苦笑した。

「私はさんに死なれるのは嫌です」

 手の中で温くなりつつあるココアの缶を開ける。甘ったるい味が口の中に広がり、胃にまっすぐ落ちていく。指先の冷たさだけでなく、心の荒みすら奪い去っていく気がする。そのせいか、顔が僅かに火照っていることに気付き私は手の甲で頬を押さえた。
 七海さんには同期が一人いた、と聞いたことがある。今いないということは、恐らくそういうことなのだろう。だから、誰かが死ぬのは困るって意味で言っただけで。

「あー、くそう……」

 あんな涼しい顔をして言われた何気ない言葉に照れている自分がとにかく恥ずかしい。孤独を感じていた私にとって、七海さんの言葉はまるで沼のようだ、と思った。
 どさり、とまた窓の外で積もり積もった雪が落ちる音がする。外を見れば、先程よりも雪が酷くなっているようだ。
 七海さんは卒業後、宣言通り呪術師にはならなかった。寮で空室になった七海さんの部屋を見て、私はそのとき彼に対し抱いた気持ちが恋だったことに気付いたのだ。

◇◇◇

「お疲れ様でした。お怪我は?」
「怪我は大丈夫ですが、ネクタイがやられました」

 帳の前で待機していた私に七海さんはそう言うと、鉈についていた呪霊の体液を落とすように地面に向かって大きく振り払った。オリーブ色のネクタイに目を向けると、確かにブレードの部分から下が見事にちぎれてしまっている。
 七海さんは片手でネクタイを外すと、ボタンを外し首元を開けた。その一連の仕草にぐっとくるのを感じながら、なんとか堪えて事後処理担当の補助監督へ連絡を入れる。
 目に毒だ。でも慣れないといけない。無理では……? 祓除の現場にそぐわぬ思いを振り払い、私は通話を終えて振り返る。七海さんは既に車のそばで待機していて、私は慌てて走った。

「このまま高専へ戻ります。よろしいですか?」
「お願いします」

 シートベルトを締めてナビを入力し、到着予定時刻を確認する。順調に行けば一時間以内には高専へ戻れるはずた。ラジオをつけようとしてバックミラーへ視線を向けると、腕を組み目を伏せている七海さんが映っていて私はそっと左手をハンドルに戻した。
 学生の頃以来の単独任務だったし、そりゃあ疲れてるよね――。私は小声で「出発します」と呟いたあと、ゆっくりアクセルを踏んだ。
 結局、『七海さんのことタイプだとか思ったことないですから』発言について、今の今まで何も説明できていない。とは言え、今更何か言ったところでただの言い訳にしかならないような気がする。絶対聞いていたであろう七海さんは全く気にしていないようだし、このまま私も忘れてしまった方が――。

さん」
「はっ!?」

 後部座席から私を呼ぶ七海さんの声が聞こえて大声を上げる。てっきり寝たと思っていた七海さんを見れば、腕は組んだまま唇を結び、こちらをまっすぐ見据える瞳とミラー越しに視線がぶつかった。

「ど、どうされ」
さんは、結局呪術師にならなかったんですね」

 食い気味にそう問われ、学生時代、二人で言葉を交わした雪の日のことが自然と頭に浮かんだ。

「正確には、卒業後二年は呪術師をやっていたんですが」
「そうでしたか」
「……昔、七海さんに言っていただいたように、自分にできることをできる範囲でやり尽くしたかなと思ったので、辞めてしまいました」

 なるほど。そう呟いた七海さんは、私たちを次々追い越していく車をじっと見つめていた。ライトの白い灯りが七海さんのどこか憂いのある表情を照らす。その顔があまりにも美しくて、私は慌てて笑ってみせた。

「な、なので補助監督としてはまだまだぺーぺーなんですよね!」
「伊地知くんとさんのおかげで高専は成り立っていると思いますよ、お二人の仕事ぶりを見る限りでは」

 だからもう、なんでそういうことを!
 ぎゅっと胸が痛いほど締めつけられ、私は熱を帯びた顔を冷やそうと少しだけ運転席の窓を開けた。車内に車やバイクの走行音が流れ込む。
 やっぱり七海さん、いいなあ。そう思ってしまうと、ぐっと目頭が熱くなった。我慢できず、七海さんの名前を呼ぶ。

「今日……五条さんに言ってた、七海さんのことタイプだとか思ったことないっていうの、嘘ですから」

 というか、めちゃくちゃタイプです、昔から。
 隣を走るトラックの轟音の中に混ぜるように、そっと本音を告げる。好き、という言葉を吐く自信は今の私にはなかった。
 車内に訪れた沈黙。果たして全部が七海さんに届いたかは分からない。しかし、徐々にとんでもないことを言ってしまった羞恥心と不安が津波のように押し寄せてきて、咄嗟に私は話題を変えた。

「そういえば、七海さんはどうしてまた呪術師に――」
「お腹、すきましたね」
「戻っ……え、お腹?」

 ぱちぱち、と瞬きを二、三度して私は時間を確認する。現在時刻、十九時半。確かに夕食の時間にはちょうどいい時間帯かもしれない。
 しまった、もっと気を回すべきだった。頭の中でコンビニや飲食店の候補がぐるぐると駆け巡る。するとそんな私に向かって、驚くことに七海さんは「せっかくなので食事でもどうですか」と言った。
 
「しょ、えっそれって私に言ってますか?」
さん以外に誰もいないでしょう」
「え、あの、二人とも戻らなくて怒られないですかね」
「いいですよ、たまには」

 お互い、積もる話もあるようですし。
 七海さんのその一言に、心拍数が大きく跳ね上がる。先程の言葉はすべて七海さんに届いていた。そう確信した。
 そんな私の変化など気付くはずもない七海さんは、さらに続ける。

「術師に戻ってから誰かと食事することもなかったので。どうせなら貴女とがいい」

 どうして、そういうことばかり言うのかな――。
 じわじわと全身を襲う熱。だんだん目の前が滲んでいって、私は瞬きを堪えて運転に集中しようとハンドルを強く握りしめた。後ろから、ふ、と小さく七海さんの笑う声が聞こえる。
 
「あまり、他の男に振り回されないでください」

 昔、七海さんに抱いた想い。今、彼に抱く感情はそれよりもずっと大きくて、深くて、重い。
 七海さんの言葉に、観念した私は何度も何度も頷いた。


(2023.09.27)